リレー俳句のみなさんと嵯峨野に遊ぶ

          秋霖の竹林瞳あけておく  児島庸晃

 まっすぐに天へ伸びた竹の林をゆっくりゆっくりと歩き柿落舎へ向かっている私たち15人の探訪をしている間も雨の音はやむことはなかった。まさに秋霖である。天龍寺の庭を抜け北門より竹林へと通じる細い道にはその足音のかそけき音を耳に残す。秋霖は静かに道を濡らした。見あげては竹の垂直に並ぶ姿に風の来ては音を作る。今しがた私たちは嵐電嵐山駅に集合してこの道を歩いているのである。関東、関西とを結ぶふれあいを京都・嵯峨野で行うべく柿落舎へと歩く。浦川聡子さんを代表とするリレー俳句人…15人。私はこの人たちとは初対面であった。竹林の薄暗くやや寒むの中を柿落舎に着き、10月26日、今日のために用意されていた句会場の座敷へと向かい投句の準備を済ませる。5句出句とのこと。それぞれ句帳が開かれ真剣。だがこの出会いの世話役をしていただいた草もち(NHKスタッフ)さんは、その心配りや気の使いようにひときわ緊張の様子が伺える。この俳聖の場所だけでもありがたいのに皆さんの心の温かさに触れ、とても幸福な時間を過ごすことになる。人に触れ心に触れ俳句に触れ、ひときわ聡子さんの存在の重さや、そして心の大きさを知ることになった。句会の披講は初蒸気さん。先日NHKBSで放送のリレー列島俳句の京都会場での司会のアナウンサーである。やはり違う、どこかその披講は違うのだ。響きのある声と言い、間(ま)のとりかたと言い、重みのある言葉と響き、訓練された披講に引き込まれていた。司会役は聡子さん、句の鑑賞を聞くにも作者は上手くはずして聞く。見事である。やはり感覚の冴えは句ばかりではなく人の心を巧みにコントロールすることでもあるのかとも思う。座敷にはストーブが置かれてはいたが句心は人心でもあると思いつつ時が過ぎてゆく。たっぶりと心に温みを感じ午後4時過ぎ句会は終った。

  ★当日作品の紹介★ 一部抜粋  括弧内は選者 ◎特選

6点 がやがやと来て落柿舎のばつたんこ  草もち(◎びーどろ、シロー、ハジメ、    比呂、髭麿)

5点 秋霖の竹林瞳あけておく  庸晃(◎初蒸気、櫻子、びーどろ、草もち)

5点 紅葉に音階のあり天龍寺  京子(◎草もち、初蒸気、シロー、びーどろ)

4点 秋時雨龍は銀鱗逆立てて  聡子(◎ミントココア、◎シロー)

4点 落柿舎に枯野の夢のひとかけら  カッポ(◎比呂、ハジメ、美和)

4点 木々はみな雨粒咥へ京の秋  聡子(◎庸晃、ミントココア、カッポ)

4点 落柿舎に枯野の夢のひとかけら  カッポ(◎比呂、ハジメ、美和)

4点 桜紅葉鐘を撞いてはなりませぬ  草もち(髭麿、初蒸気、櫻子、びーどろ)

4点 斎宮の淡き色香や水の秋  冷凍犀(初蒸気、ミントココア、カッポ、比呂)

3点 秋冷の瀬音雨音嵐山  美和(ハジメ、櫻子、庸晃)

3点 縄文の壺の重さや草紅葉  櫻子(ミントココア、カッポ、髭麿)

3点 錦絵に山霧の白流れ込む  ミントココア(◎櫻子、聡子)

2点 腰据ゑて大方丈の冬隣  ハジメ(シロー、ミントココア)

2点 人を打つ雨南天を含む雨  初蒸気(美和、庸晃)

2点 斎宮の雨となりたる藤袴  びーどろ(◎冷凍犀)

2点 しぐるるや嵯峨野落柿舎天竜寺  シロー(京子、草もち)

1点 ゆるゆると心ほどくや里の秋  髭麿(ハジメ

1点 雲龍の眼の光薄紅葉  比呂(カッポ)