神戸新聞文芸 掲載作品(入選作品)

                              2023年度の神戸新聞文芸    俳句部門

 2023年の神戸新聞文芸俳句1月・3月・4月・5月・6月・9月の入選句・8月特選句を紹介させていただきます。    児 島 庸 晃

     ★1月入選句2023年1月3日朝刊掲載)

      うふふふと生きているふり懐炉抱き    

     ★3月入選句(2023年3月6日朝刊掲載)   

       大寒も僕と暮らすかぼくのへそ  

     ★4月入選句(2023年4月19日朝刊掲載)

      念力の解かれて転ぶ雪だるま  

     ★5月入選句(2023年5月8日朝刊掲載)

      脊髄に加齢詰めては四月行く 

     ★6月入選句(2023年6月19日朝刊掲載)

      シャボン玉まだまだ上へ風も借る

     ★8月特選句(2023年8月7日朝刊掲載)

      直立の念力ゆるむ五月の木  

   選者…わたなべじゅんこ…さんの選評

 いったい誰のための念力なのだろう。その念力が緩んでたわんでしまったのだろう  か。そういえば五月病と言う社会の病がある。それにかかってしまった木立なのだろうか。木が何かの象徴と読みより、そのものととらえる方がわかった気になれる。一つ一つ語意はとれるのに繋がってみると煙に巻かれてしまう。そこが楽しい。同じ作者に〈あじさいの花重たくて風曲がる〉こちらは素直でわかりやすい一句。 

     ★9月入選句(2023年月25日朝刊掲載)

      懸命に綿菓子広げ雲の峯 

 俳句は私を巧みに語る文芸。私の心境を考えると、自分自身をどれだけ純粋に保っていられるかを思う。複雑な社会である。真当な私を維持している事の難しさ。でも文芸の中では真当な私でいる事が出来る。俳句は心の支えなのかもしれない。