神戸新聞読者文芸…私のメモリアル⓶

            神戸新聞文芸 掲載作品(入選作品)

                   児 島 庸 晃      

〇川柳部門      

2021年神戸新聞文芸川柳1月・4月・6月入選句を紹介させていただきます。                                      

 ★1月入選句(2021年1月4日朝刊掲載)

    題…「脱ぐ」

 特選 

  蛇口より脱皮始まる水ぞ今朝

 選者…矢上桐子さんの評は次の文章でした。

 「評」“蛇 ”口の脱皮かと思えば、脱皮しているのはどうやら水。透きとおる蛇ではないですか…あふれ出る水に生命力を感じられたのでしょう。「脱皮始まる」の臨場感。「水ぞ今朝」とたたみかける勢いに、作者の感動が伝わってきます。水にいのちを吹き込んだ作者の感性も、脱皮したかのようなみずみずしさです。あふれ出る水のイメージとことばのスピード感もマッチして、一句にうるおいが満ちています。

 ★4月入選句(2021年4月26日朝刊掲載   

    題…「夕」

  手を櫂にまだまだ歩く春夕べ  

 ★6月入選句(2021年6月16日朝刊掲載 

    題…「駅」 

 特選 

  ♭(ふらっと)の音す青葉の無人

選者…矢上桐子さんの評は次の文章でした。

「評」無人駅の句は多かった。無人駅は存在そのものが詩なのかもしれません。さて、♭は音楽で半音下げる記号です。エネルギッシュな青葉に囲まれて、かえって駅が寂しげに感じられたのでしょうか。名詞「フラット」の平坦なと言う意味合いや、副詞「ふらっと」の気軽に立ち寄るニュアンスなど、♭が重層的に働いて句の味わいを膨らませてくれています。音を想像させながら、とても静かな句です。

 

〇俳句部門

2018年の神戸新聞文芸俳句・7月・8月の入選句を紹介させていただきます。              

 ★7月入選句(2018年7月2日朝刊掲載)

   垂直に触覚立てて五月行く

 ★8月入選句(2018年8月15日朝刊掲載)

   広島やあの日真白き夏帽子

          (水田むつみ選) 

 ★8月入選句(2018年8月27日朝刊掲載)

   本日はハープ奏でとなって梅雨      

          (わたなべじゅんこ選)

 俳句における自己主張はとても大切なことなのだが、ときに説明言葉になり意味性の強いものになる。それでは詩語にならない。俳句はポエムである。

 

2019年の神戸新聞文芸俳句1月・2月・4月の入選句を紹介させていただきます。         

 ★1月入選句(2019年1月14日朝刊掲載)

   ルート4解けば2…2は白鳥?

 ★2月入選句(2019年2月11日朝刊掲載     

   人間を崩さず座るお正月

 ★4月入選句(2019年4月10日朝刊掲載)   

   春風にとびのる構え風見鶏        

 ただ単に目視と言っても、両眼のみの目視では見ているだけのこと、心で思うことの素直さが大切。目視して「あ!」と思う瞬間が大切。つまり

心の動きがいるのだろう。  

 

〇短歌部門

2015年神戸新聞文芸短歌1月・2月・3月・5月入選歌紹介させていただきます。          

 ★1月入選歌(2015年1月19日朝刊掲載)

   鬼の子と言われミノムシぶらさがるゆっくり微風揺りては癒す   

 ★2月入選歌(2015年2月23日朝刊掲載)

   冬蝶が花びらになり陽を吸うてハープ奏での風を待つ午後    

 ★3月特選歌(2015年3月16日朝刊掲載)

   心の鍵すこし解きたく旅に出て宇和島駅に心捨て置く

  以下は選者…尾崎まゆみ…さんの特選評です。

心の鍵をしっかり締めてあまり思いを見せないように、朝起きてご飯を食べて、様々な人と関わりながら毎日を過ごす。日常生活をこなすのは、当たり前でそれとなく過ぎてゆくものだけれど、結構疲れる。だから時々私は旅に出たくなる。その行き先は宇和島愛媛県の南にある海の幸と蜜柑と真珠の町。青い空と段々畑と山。自然がたっぷりとあって癒される宇和島駅に疲れた心を置いて帰るのもいい。「宇」は宇宙」の「宇」。宇宙のすべてのものが丸く収まる駅なのだ。

 以下は私の感想です。

 言葉の選択に、心をこめることは真実がどれほど伝達出来ているかとのことなので、それは私自身が無垢で濁りがないことです。言葉が機能していなければただの言語でしかありません。言葉の持つ誇張表現に苦心しました。

 ★5月入選歌(2015年5月11日朝刊掲載)

   ワイン飲む天の窓より銀河入れ老人ふたり今日の晩餐

 言葉をスリムにして無理な言葉の使用にならないように心配り。文体が肥満化しないようにできるだけ無駄な言葉の入らないようにしての緊張感。なんとなくではあるが実現出来たのではなかろうかと思います。

 

2015年の神戸新聞文芸短歌6月・7月・9月・11月・12月入選歌を紹介させていただきます。        

 ★6月入選歌(2015年6月1日朝刊掲載)

   土筆野へ私ちょっと途中下車手足連れ行く神戸垂水区

 ★7月入選歌(2015年7月20日朝刊掲載)

   頬杖の杖にもならん老いる手よ毎日使い生きている手よ

 ★9月入選歌(2015年7月28日朝刊掲載) 

   立秋の僕は愛情発信人老いゆく妻へ僕も老いゆく

 ★11月入選歌(2015年11月11日朝刊掲載)

   極上へ脱皮重ねる茜雲クレパス色の秋はいくつも

 ★12月入選歌(2015年12月7日朝刊掲載)

   爪に月灯して帰る十五夜のその人えくぼ見事なえくぼ

 

 言葉感覚とは…そのように思って作っていると不思議な臨場感が心に漲ってくる。作るといううよりは自然体なのかもしれない。