私性句体の本質とは

               ……その本質実態に迫る……

                  児 島 庸 晃

 私性の句体は心をからっぽにすることから始まる。からっぽにすることが出来た心で目視を始めること。私がこのことをはじめて知ったのは野木桃花さん(「あすか」主催)の言葉だった。

・・・つねに純粋な目で物を観たいと思っています。感性を磨くためには、やはり、心をからっぽにするほうが早いのではないかと思いました。

上記の言葉は2004年「俳壇」8月号で、小澤克己さんとの対談言葉であった。

   旅心ふつふつ桃の咲く日和    野木桃花     

   やさしさのすり減ってゆく夏帽子  野木桃花 

   嫁ぎゆく子よはつなつの蝶になれ  野木桃花

文芸は人間が描けていなければ人の心へは入ってこないのである。これは小説もエッセーも短歌も川柳もである。全てを一人称で捉えなければ感動は得られないのである。それを成し遂げるには私性の句体に徹すること・如何なる私性志向を深めるのかと私は終日考えた。