潜在意識とは……何

             潜在意識を発見することの大切さ

                 児 島 庸 晃

 心の準備と言えば、目視に際し潜在意識を発見することかもしれないと思うことが私にはある。目視とは作者の目に最初に飛び込んでくる事柄でもあるが、作者にとっては一番に興味をひくことでもある。何故興味を引くのか。その事柄は作者の体験したことや出会ったことである。ふとしたことでそれらを思い出す。新しい体験ではなく作者の思い出の中にあるもの…それを潜在意識と言う。

   炎天を槍のごとくに涼気すぐ   飯田蛇笏

第八句集「家郷の霧」より。この句は昭和29年69歳の時の句である。蛇笏は飯田龍太のお父さん。俳句結社「雲母」の初代主宰者。私がこの句を知ったのは高校時代でまだ伝統俳句の全盛期であった。何が私の心に飛び込んできたのかと言えば、「槍のごとくに涼気」の比喩であった。この比喩は作者の体験に基づくもので、そこに住みつき日々体に染みついたもの。作者だけに、強烈に感じとることの出来たもの。これらの作者自身の自己体験より発せられる実感である。「炎天」の地面に作者は立っていて、一瞬の「涼気」と出会ったのであろう。そしてこのことは何回もあったのだろうと思う。この体験が潜在意識を目覚めさせたのではないか。潜在意識とは何回もの体験によって作者の脳内に蓄積されたものの意識である。目視していたのは「炎天」、ここより作者の連想が始まり、「涼気すぐ」を思い出す。その結果、顕在意識が作者の眼前で起こる。その俳句言葉が「槍のごとくに」の比喩言語。だが、突然この比喩言葉が発生したのではない。作者の心の準備が出来ていたからである。この句の所作の中に顕在意識→連想→潜在意識の流れの一連の行動が準備されていたからなのだろうと私には思える。この句は形式こそ新しくはないが、俳句の基本としての準備が顕在意識→連想→潜在意識の過程を経て出来上がっていた。顕在意識は心の中に何時でも、誰もが持っているものである。